石橋英子がBlack Truffleよりリリースの名盤、待望のリプレス。作者をわかりやすくカテゴライズするのは難しい。まず、映画音楽が作者のキャリアの一つの側面。「Drive My Car」のサントラでは世の中の注目を浴びることとなった。また、ソロ作品でも評価は高い。Drag Cityからリリースの「The Dream My Bones Dream (’18)」やBlack Truffleからリリースの「百鬼夜行 (’20)」もミュージック・ラバーを唸らせた傑作であった。そして、様々な音楽家のサポートに回ることもしばしば。坂本慎太郎/ 星野源/ 灰野敬二らビックネームからの信頼は厚く、共演が多い。
本作はドラムスで山本達久/ Joe Talia、ギター/ ミックス/ マスタリングでJim O’Rourke がクレジット。この座組はMatière Mémoireからリリースの「Treatments (’21)」と近しく、本作の布石となっている。構成は大きく分けて二つに分かれる。まず一つは、A1/ B1 の15分を超える長尺の楽曲だ。即興性が高いジャズや、コラージュ/ コンクレート・ミュージックの方向性。前衛性がありながらもストイックな緊張感は感じられない。霧が立つ、早朝の湖面のような静けさだ。もう一つのパートはB2の5分ほどの楽曲。その湖面の霧がふっと晴れるように、物語に華やかさが加わる。本作を印象付けるアルトサックスの流線は親しみやすい。それらと会話を楽しむようにドラムスは軽快だ。うーん、改めて聴いても名盤だ。
(店主)
Ambient/ Jazz/ ConcreteMusic

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