フィリピンをルーツに持つサンフランシスコ出身のAna Roxanne。自主制作盤をLeaving Recordsより再発し、作者に光が当たる。その後、Krankyよりフルレングスをリリースし、より広く世に知られることとなる。決して多作でない作者の貴重な1stが待望のリイシュー。
一見、ミニマルに伺える音像は、心を落ち着けて耳を澄ますと、多様な選択肢に満ちていることに気づく。例えば、シンセやヴォイスの持続音は、ある側面は清く澄みながら、別の側面は重要なくぐもり方をしている。また、俯瞰して見ると、ニューエイジ・リバイバルの神秘性を孕みながら、その一方で、ルーツミュージックに即した土着的な響きさえ併せ持っている。それらの複合的で抽象的な音の層は、暴力的なわかりやすさとは距離を置き、システマチックなこの現実世界に一滴の重要な淡さを与えている。それは、多様な出自を持ちながら、性がもたらすアイデンティティを模索(自身はインターセックスであることを公表している。)した作者にとって固有のイマジネーションなのだろう。
(店主)
Ambient/ NewAge/ Drone

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