トロントを拠点とするMasahiro Takahashi。2023年リリースの名盤が待望のリプレス。レーベルは同じくトロントのTelephone Explosion。Steve Roach、Joseph Shabason、Lee Paradiseなど優れたニューエイジ・サウンドを世に送り出し続けている。
本作でまず触れるべき点は、その豪華なクレジット。Joseph Shabason、H. Takahashiなど、近年のニューエイジ・リバイバルや、アンビエントとジャズの接近など、重要なシーンの転換期に活躍する人物ばかり。それらを見事な手腕でオーケストラレーションするのが、Masahiro Takahashi。Not Not Funからリリースの前作「Flowering Tree, Distant Moon (’21)」とは、ニューエイジという枠組みで地続きでありながら、美しいメロ、豊かな音色の幅は今作でより洗練されたものとなっている。
まろみがあり輪郭の美しいVibraphoneから始まり、フルート/ サックスの染み入るような描画で展開する。それぞれの音がこれ以上足すこともできず、引くこともできない均衡を保っており、どこからどう眺めてもその非常に高い完成度にうっとりとする。また全体の仕立ては、アートワークが象徴するようなトロピカル・サウンド。しかしそれは、底なしに陽気な真夏の熱狂ではなく、窓の外を移ろう薄暮のオレンジがよく似合う。その極めて私的で濃密な時間の移ろいこそが至上の豊かさだ。
本作がアンビエント、ニューエイジ、バレアリックのシーンで重要な一枚になっていることは間違えない。マスターピース。
(店主)
#Ambient #Balearic

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