ドイツのピアニスト、マックス・リヒター。伝統的なクラシック音楽を扱うレーベル、Deutsche Grammophonより2015年リリース。
マックス・リヒターは同年に約8時間に及ぶ作品「Sleep」をデジタル・リリースする。タイトルの通り「睡眠」をテーマにした作品。8時間、この作品を最初から最後まで聴くとイーノがテーマにした「興味をそそるが無視できる」状態に往々にしてなり得る。本作は、その作品を1時間に構築し直しヴァイナル・リリースした作品。
睡眠導入という機能性に着目しがちだが、この作品の本質は睡眠という「現実から離れた状態」へと誘う、音楽としての剥き出しの美しさにある。睡眠は結果でしかない。
ピアノ、ストリングスが歩くより遅い速さで的確に配置され、不要な脚色のない音色が選ばれ、その洗練にうっとりとする。ノイジーな対象物は人を無意識に辟易させ、遠ざける。過剰な装飾のない本質的な美しさは人を（意識と無意識を交錯させながら）自然に惹きつける対象物となり得る。その魅力が「睡眠」という豊かな結果をもたらすのだ。
睡眠を目的化した安易なヒーリング・ミュージック(そのチープさが逆説的に作品性を帯びることもあるのだが。)とは距離を置き、クラシカルな音楽基盤に裏付けされた洗練された音楽を堪能いただきたい。
(店主)
#Ambient #Drone
