広島在住、アンビエント/ ヒップホップを軸とする、冥丁。Pitchforkの「Best Experimental Albums」への選出など、国内外で賞賛を受け、アンビエント・シーンに冥丁の名を確立した。ノスタルジックなサンプリング、ヒップホップ文脈のコラージュ。それらが要素として滲みながらも、軸にある固有の世界観が特出している。作者がシーンに大きな扉を開けたことは間違えない。
本作は、過去作「怪談 (’18)」「小町 (’19)」と地続きで、2020年から続く「古風」シリーズ三部作の完結編。作者が得意とする、土着的でLo-Fiなサンプリング、気持ちよく揺れるヒップホップ・ビートは今作でも健在。その一方で、B3「Heiwa」で焦点がぐいと変わり、B4「Hiroshima」で作品が締め括られる。悲劇的な歴史を辿ってきた広島にルーツを持つ作者固有の視点だ。作者が焦点を当て続けた日本古来のモチーフは安易なノスタルジアではなかった。過去を懐かしむ空疎な逃避でもない。現実に起きた圧倒的な暴力に対して、肉薄しコミットしている。そのパースペクティブの奥深さが過去シリーズと比較し、より魅力的に映る。
畠山地平によるマスタリング。32Pブックレット付き。
(店主)
#Ambient #Experimental #Lo-Fi

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