ポストクラシカルを代表するベルリンのピアニスト、ニルスフラーム。
今作はピアノのみのミニマルな作品。十分に余白の取れた音が一つ一つ示唆的に配置される様は有能なチェスプレイヤーが端的にチェスピースを進めるようだ。
本当に大切なことは言葉にすることが難しい。ある種の「わかりやすさ」は暴力になりうる。内なる大切なことを可能な限り丁寧に、ありありと表現できるよう、人は表現方法を模索する。
この作品の最初の音に耳を澄まして欲しい。内なる混沌とした心象風景を、たった数音で形取る見事な説得力を持っている。この技巧がもたらすのは魂の救済だ。ハロルドバッドがお好きな方に是非。
(店主)

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