坂本龍一が現代音楽に傾倒する「out of noise (’09)」の8年後、本作「async (’17)」を発表する。”3.11″ を境に多くの人生が変わったのと同様に、坂本龍一の音楽も変化していった。本作では、東日本大震災で津波に流されたピアノを楽器として使用している。鍵盤は沈み、金属は錆び、木は朽ちていた。もちろん、調律は狂っている。それが async = 非同期 のイマジネーションに影響を与えているかもしれない。暴力的な自然を目の当たりにし、「自然」と「同期的なシステム」を対比せざるを得なかった。システマティックな五線譜には、表現することができない音楽を改めて追求したのだろう。相反する自然への強い憧憬なのかもしれない。
その後、遺作「12 (’23)」ではその自らの思念さえも自然に回帰するよう、音楽が自由であった。
(店主)
Ambient/ Abstract

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