バレアリックなパーティーで最高の一曲がかかった時、「ああ、なんて世界は多様で、平等で、幸福に満ちているのだろう」と思うことがある。Suzanne Kraftの本作は、そんなデモクラティックな音楽だ。シラフに戻る始発電車で、流れるニュースのような現実に、毅然として抗う包容力を持っている。
Gaussian Curve、Discossessionといったプロジェクトでも活躍するLAのプロデューサーSuzanne KraftことDiego Herreraはシーンを代表する一人。FFKTなど国内大型フェスに参加し、日本での評価も高い。
本作はJonny NashのMelody As Truthよりリリース。「Phantom Actors（’14）」と「Exit Strategies（’15）」に続く連続的なリリースでアートワークが統一されている。（そしてそのアートワークはため息が出るほど美しい。）本作がSuzanne Kraftの他作「What You Get for Being Young（’19）」「Passive Aggressive（’17）[Jonny Nashとの共作]」等と決定的に異なるのは（誤解を恐れずに言うならば）POPのアティテュードが存分に含まれている点だ。しかしそこに、コマーシャルな響きは一切ない。聴く者に平等に訪れる、幸福な音楽だ。非日常の高揚感と日常の安らぎをちょうど良いバランスで持った完璧な一枚。
オリジナル盤は中古市場で高騰する中、貴重なリイシュー。
（店主）
#Ambient #Balearic
