細田守 作品、朝ドラの劇伴を務めるなど、今や日本を代表する音楽家、高木正勝。AOKI takamasaと共にSILICOMでデビューするなど、映像作家/ 電子音楽の側面に最初に光が当たった。初期の作品はグリッチなどエレクトロニカ・サウンドが印象に残る。途中、「Private / Public (’07)」「Tai Rei Tei Rio (’09)」ではワールド・ミュージックの要素が色濃く表現される。世界中を旅した作者ならではの視点だろう。その後、2011年以降、山奥への移住をきっかけに、作品の色合いに変化が訪れる。(2011年、日本人にとってそれは、非常に大きな時代の境目だ。)その変化の一つがこのマージナリア・シリーズ。自宅の窓を広く開け、ピアノを独奏する。作品には、山奥の自然の音が存分に含まれている。いや、むしろ独奏という表現は適していないかもしれない。自然の音はピアノと調和し、共に創造性の一部を担っている。録音マイクをピアノだけでなく、自然の中にも数多く向けていることから作者のこだわりが伝わる。そんなマージナリア・シリーズは、#140を超えて制作され、作者の重要なライフワークとなっている。
まず、前作から季節の移ろいを感じる。川は清らかに流れ、鳥の声が豊かに響く。そして、マージナリア IV の制作期間にパートナーの懐妊を経験したという。前作と比較し、ピアノは自然の音色を尊重したように幾分控えめだが、深部にあるのは身体を温めるささやかな多幸感だ。
(店主)
#Ambient #ModernClassical
track list :
A1. Marginalia #89
A2. Marginalia #90
A3. Marginalia #95
A4. Marginalia #96
B1. Marginalia #98
B2. Marginalia #101
B3. Marginalia #102
B4. Marginalia #103