密室的なジャズとは距離を置き、自由で開放的なイメージに満ちている。作品が持つ軽やかさは、新しい風の吹く草原を自由に飛び回る子鹿のよう。また、フレッシュでみずみずしい音の連なりはカワセミが獲物を狙って入水する美しい飛沫のようだ。
ジャズに新たな風を送り込んでいる名門レーベル、Gondwana Recordsはアンビエントとジャズの合流地点にいるシーンの震源地だ。UKのトランペッターMatthew HalsallはこのGondwana Recordsの創設者。過去の様式を尊敬しつつ、枠組みを常に越えようとする彼の探究心はレーベルの揺るがない柱になっている。
2023年リリースの本作が過去作と大きく異なる点は、Kalimba, Xylophone, Harp を大胆に用いた装飾や、鳥のさえずりなどのフィールドレコーディング。2020年リリース「Salute to the Sun」でも同様の楽器が用いられているがここまで大胆には採用されていない。それら装飾が利き手に与える印象は、オーガニックな澄み切った開放感だ。その一方で、しなやかだが、信念のあるトランペット/ フルートの流線は作者らしい。また、ポジティブなムード、コードの移行が本作を印象付ける重要な要素となっている。
作者の長いキャリアの中で重要なカタログになるだろう。本作はクリア・ヴァイナル仕様。
(店主)
#Ambient #Jazz

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